福岡第608回 習近平の中国をどうみるか/ 前中国大使の垂氏が講演
西日本政経懇話会9月例会が11日、福岡市であり、立命館大教授で前駐中国大使の垂(たるみ)秀夫氏が「習近平中国をどう理解するか?」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。
習近平国家主席(共産党総書記)は今、一強体制と言われる。鄧小平氏から集団指導体制が長年続いたが、2012年の習氏就任で中国は大きく変わり、私たちは過去の中国の常識を捨てる必要がある。
党規約は改正されていないものの、党政治局常務委員など総書記と近い地位だった幹部職を習氏の部下に位置付ける実質的な変更が進み、集団指導体制が大きく変わる契機となった。
習氏は神格化され、周辺は待ちの姿勢で忖度(そんたく)が横行している。あらゆることが1人によって決まる形だ。
国家の戦略目標も変わった。経済成長が見込めなくなり、腐敗・汚職や環境汚染、経済格差といった三つの課題に対処しながら、国家、社会の安全を最優先の目標として掲げるようになった。一時期増えた暴動は激減。今や至る所に監視カメラが設置され、富裕層は世界各地に逃げている。
国家の安全を優先すると「強い中国」が必要となり、強気の外交に向かう。「グローバルサウス」とともに、欧米中心の世界秩序そのものを根本から変えようとしているのはそのためだ。米国との関係さえ調整すれば、日本は米国についてくるだけなので、日本は見えない、見ない存在になってきており、危機感を持っている。 (竹次稔)
2024年(令和6年)09月12日(木)