西日本政経懇話会

久留米第581回 ウクライナ侵攻「崩れる 世界の安保スキーム」/前統合幕僚長 河野克俊氏

 西日本政経懇話会2月例会が7日、久留米市であり、前防衛省統合幕僚長河野克俊氏が「今後の日本の安全保障とその課題」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。

久留米 河野克俊.jpg

 ウクライナ戦争はなぜ始まったのか。日本人には分かりにくいが、プーチン大統領の歴史観が原因だ。彼にとって、ロシアとウクライナは同根であり、独立国であることが許せない。国内の治安問題と捉えているので、戦争がいつまで続くか分からない状況だ。
 ロシア軍は圧倒的な戦力差を持つのに、戦況は泥沼化した。かつての日本軍の失敗を検証した書籍「失敗の本質」に照らせば、理由は三つ。戦争遂行への不明確な目的と、戦力の逐次投入、そして根拠なき楽観主義があると思う。
 この影響で世界の安全保障のスキームは崩れた。核保有国のロシアが核を持たないウクライナを脅している。核拡散防止条約(NPT)では想定外で、以前よりも核拡散の歯車が回り始めている。核戦争を恐れ、軍事介入しない米国を目にするのも初めてだ。
 日本は米国の核の傘に依存している。昨年末に閣議決定された安保関連3文書では非核三原則を堅持したが、日本を巡る核の環境は変わり、国民的議論をする余地がある。(山下真)

2023年(令和5年)02月08日(水)

これまでの記事一覧