久留米第605回 「作り手の思いは時代を超える」/映画評論家の立花氏
西日本政経懇話会4月例会が4日、久留米市内であり、映画評論家で共同通信客員論説委員の立花珠樹氏が「映画でたどる韓国現代史」と題して講演した。要旨は次の通り。
日本で多くの人が韓国映画を知る契機になったのは「シュリ」(1999年)だ。韓国に潜入した北朝鮮の女性工作員と、韓国情報部員との悲恋を描いた作品で、日本でも大ヒットした。南北の兵士の交流などを描く「JSA」(2000年)もスケールが大きい。
これらの作品が生まれた背景に、太陽政策で知られる金大中(キムデジュン)政権の誕生がある。北朝鮮の人であっても通じ合えると描くことで、普遍的な人間ドラマの面白さが広く共有された。韓国経済を立て直そうと、国策として文化産業を支援し、輸出を促進したこともある。
韓国で大ヒットした「ソウルの春」(23年)は、韓国で戒厳令が発令された「粛軍クーデター」(1979年)を基にしている。昨年12月に尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が戒厳令を出し、うまくいかなかったのは、時代を映画の時代に逆行させてはいけないと多くの人が思ったからではないか。映画が人々に与える影響力は大きい。
作り手が映画作品に込めた思いは、時代を超えて伝わる。 (岡部由佳里)
2025年(令和7年)04月05日(土)