北九州第600回 南海トラフ 発生確率は「水増し」 東京新聞記者・小沢氏が講演
西日本政経懇話会の11月例会が28日、小倉北区のJR九州ステーションホテル小倉であり、東京新聞社会部記者の小沢慧一氏が「南海トラフ地震 確率水増し問題と臨時情報の正体~科学と防災行政の歪な関係とは~」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。
政府の地震調査委員会は、南海トラフ地震の発生確率を「30年以内に70~80%」と公表し、マスコミもそれを枕ことばのように使って備えを呼びかけてきた。しかし、ある地震学者から「数字が水増しされている」と告発を受けた。
調べると、南海トラフ地震の発生確率だけが、多くの科学者が「問題がある」と批判していた計算モデルで算出されていた。他の海溝型地震と同じ計算手法だと20%まで下がる。計算モデルの根拠とされた江戸時代の古文書も、数値などが不正確だった。政府は20%という数値も公表すべきだった。
8月、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表された。科学的根拠が薄い情報だが、観光施設の閉鎖や交通インフラの規制など社会に大きな影響を与えた。対策をどこまでするかは課題だが、防災訓練と捉えて備えを見直す機会にしてほしい。 (壇知里)
2024年(令和6年)11月29日(金)