筑豊第607回 映画から見える韓国社会 映画評論家の立花珠樹氏講演
西日本政経懇話会4月例会が3日、飯塚市で開かれ、映画評論家・共同通信客員論説委員の立花珠樹氏が「映画でたどる韓国現代史」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。
韓国映画が日本や世界で見られるようになったのは歴史的には新しい。私の出合いは、日本でも大ヒットした「シュリ」(1999年)だった。韓国に潜入した北朝鮮の女性工作員と韓国情報部員との悲恋などをうまく描いた。JSA(2000年)では、南北の兵士の心の交流が始まっていく。スケールの大きな娯楽作は、日本の映画ファンたちを驚かせた。
圧倒的な面白さを得た映画が生まれた背景には、金大中(キムデジュン)政権の誕生(1998年)がある。金大中氏は(北朝鮮に融和的な)太陽政策で知られる。北朝鮮側の人々が「家族を守りたい」「そばにいる人間を助けたい」といった自分たちと同じ気持ちを持っている―。これまで描けなかった、そのような姿を描けたことが、ヒットの理由だろう。
国際通貨基金(IMF)危機(97年)以降、韓国では、男女や貧富といった「分断」が深まっている。国民的俳優、ソン・ガンホが出演する「パラサイト 半地下の家族」(2019年)、「ベイビー・ブローカー」(22年、是枝裕和監督)では、現代の韓国社会が見えてくる。 (吉田真紀)
2025年(令和7年)04月04日(金)