筑豊第598回 半導体再興へ人材育成を
西日本政経懇話会6月例会が19日、飯塚市内であり、九州大名誉教授で工学博士の安浦寛人氏=写真=が「九州の半導体産業の再興に向けて~TSMCの熊本進出の意味~」の演題で講演した。要旨は次の通り。
「産業の米」と呼ばれる半導体はパソコンやスマートフォン、データセンターなどに幅広く使われ、2000年から20年間で市場が3倍に拡大した。
そうした中、注目されるのが熊本県に進出した台湾積体電路製造(TSMC)。半導体の受託生産に特化し、生産額で世界首位のメーカーだ。今でこそ半導体の生産額は台湾が九州の約10倍だが、30年前は関連産業まで含めると九州が台湾の10倍を超えていた。
日本の半導体産業の再興に必要なのは人材育成。若者が人生を懸けられる産業として、継続的な学びの場をつくることが重要だ。
それを実現したのが、飯塚市の九州工業大情報工学部にある研究施設「マイクロ化総合技術センター」。ここでは製造プロセスの全体像を学べるとあって、多くの技術者らが研修に訪れている。これができるのは、日本ではここだけだ。
九州には、半導体の関連企業が千社以上あり、台湾との連携も進む。産業発展の環境が与えられた。それがTSMCの熊本進出の意味と捉えている。日本の半導体が立ち直るのは、九州からだろう。
(坂井彰太)
2024年(令和6年)06月20日(木)