筑豊512回 「多元性で災害を生き抜く」/宗教学者・山折哲雄氏が講演
西日本政経懇話会6月例会が1日、飯塚市のパドドゥ・ル・コトブキであり国際日本文化研究センター名誉教授で宗教学者の山折哲雄さんが「震災に向き合う日本人の心象」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。
熊本、大分で直下型群発地震が起きた。地震列島でどう生きるか。1923年の関東大震災後、先達はどう論じたか教訓にしたい。
物理学者の寺田寅彦はエッセーで、度重なる地震に見舞われてきた日本人は「自然には太刀打ちできない」という無常観を太古から体得していると説いた。倫理学者の和辻哲郎は、台風に備えて近隣と協力することを通して日本人はモラルを形成してきたと述べた。作家谷崎潤一郎は間接的な光の中で衣食住を営む、風土と密接した日本文化の神髄を論じた。
日本の国土は森林の縄文社会、田園の弥生社会、都市の近代社会の3層からなる。過去の文明を否定せずに今に残している。日本人の精神も3層構造だ。一神教ではない多元的な考え方こそが、自然災害で生き抜く参考となる。