北九州第560回 蒙古襲来、敗戦で評価一変/国文研・呉座勇一助教
西日本政経懇話会の3月例会が12日、小倉北区のホテルであり、国際日本文化研究センターの呉座勇一助教が「蒙古襲来の実像~『戦争と平和』を考える」の演題で講演した。要旨は次の通り。
戦前、国粋主義の流れの中で蒙古襲来はモンゴル帝国と戦って勝った栄光の歴史と
して語られた。ところが敗戦で評価は180度変わり、外交交渉で回避しなかった不毛な戦争という批判が出てきた。これは明らかに戦後の平和主義に基づく価値観だ。本当のことはその真ん中辺りにあると私は思う。
蒙古襲来では苦戦を強いられたが神風で勝ったというのが戦前以来の説だが、1回目の文永の役(1274年)は、鎌倉武士の奮戦でモンゴル軍が撤退したと考えるのが妥当。しかし、戦時中に鎌倉
武士は勇敢に戦ったと国民を鼓舞した反省もあり、戦後はそう言いたくなくなってしまった。
700年前に起こった戦争すら、思想的な問題と切り離して見る
ことができない。まして太平洋戦争や憲法9条の問題になると、ますます冷静に見ることができない。だからこそ、何百年も前の戦争を冷静に客観的に研究するところから始めてもいいのではないか。(宮田英紀)
2021年(令和3年)03月13日