福岡第570回 歴史学者、呉座勇一さんが講演/ 蒙古襲来の実像に迫る
西日本政経懇話会の3月福岡例会が11日、福岡市で開かれ、国際日本文化研究センター助教
の呉座勇一さん(40)が講演した。「蒙古襲来の実像 『戦争と平和』を考える」と題し、最新の学説を交え、鎌倉期の戦争について掘り下げた。
呉座さんは日本中世史が専門で、「応仁の乱」などの著書で知られる歴史学者。講演は元軍に上陸を許した文永の役(1274年)に絞って解説。「鎌倉武士は苦戦し、神風のおかげで勝った」とする戦前からの通説を紹介した。現在は「神風説」は否定され、「苦戦説」は不合理な点はあるが信じられていると指摘。戦前は戦意高揚のために「神風」が持ちだされ、戦後は平和主義の観点から「弱い鎌倉武士像」がつくられたと説いた。
呉座さんは「大昔の戦争でも客観的にみることができない」と強調。太平洋戦争の評価、憲法改正などが議論される現状を踏まえ「700年前の戦争を冷静に見られないなら、約70年前の戦争を見ることができない」と結んだ。 (小川祥
平)
2021年(令和3年)03月12日