久留米第596回 半導体 九州の強み生かし人材育成
西日本政経懇話会6月例会が27日、久留米市であり、九州大名誉教授で国立情報学研究所の安浦寛人副所長が「九州の半導体産業の再興に向けて TSMCの熊本進出の意味」と題し講演した。要旨は次の通り。
半導体産業は、自動車産業に匹敵するほどの総合産業で裾野が広く、全体像を捉えることが重要だ。日本は半導体の製造装置や材料供給で高いシェアを誇ってきたが、いわばニッチな分野。一方、熊本に進出した台湾積体電路製造(TSMC)が強いのは「前工程」という分野で、特に高度な設計を基に付加価値も高いロジック半導体などの製造で高シェアを占めている。
日本の半導体産業が右肩下がりに陥ったのは、高付加価値を生む設計ができる人材教育を軽視し、水平統合型の国際分業にも対応しきれなかったから。台湾は安全保障上の戦略として国策化した。ただ福岡では2000年代にシリコンシーベルト(海域)を構想し、関連企業約500社を集積させた。今も飯塚市に国内有数の半導体製造の研修拠点があり、今年は2千人が研修するという。半導体技術を使い、バイオ産業などにも展開できる。TSMC進出を利用し、地の利も生かして九州を強くしていきたい。
(大矢和世)
2024年(令和6年)06月28日(金)