北九州第582回 賃上げ背景に経済安保/ ニッセイ基礎研究所の矢嶋氏
西日本政経懇話会3月例会が16日、小倉北区であり、ニッセイ基礎研究所の
矢嶋康次チーフエコノミストが「なぜ今、賃上げなのか~日本経済の現状と展望~」と題して講演した=写真。要旨は次の通り。
コストがコントロールできない時代に入った。背景には欧米や日本などの民主主義国と、中国やロシアといった権威主義国の「分断」がある。世界のあらゆるものが入手できた時代は終わった。通信、半導体、宇宙分野などは経済安全保障を考える必要がある。
この流れは止まらない。コスト高の中で成長するには、生産性を上げる必要がある。生産性を上げるのは人がつくり出す付加価値だ。企業は頑張った人に報いる循環をつくらないといけない。そういう意味で賃上げや人的投資が必要だ。
経営はベクトルを変え、真のデジタル化を進めるべきだ。日本には製造業という強みがあり、アジアの市場では地理的な優位性がある。ただし、判断するのは消費者だ。例えば飲食店情報サイト「食べログ」のように、安心安全な品質もデータで裏付けなければ買ってもらえない。
日本にもチャンスはある。未来の期待感を出せば、投資を呼び込める。そのためには付加価値をつくり上げなければならない。現政権の規制緩和や構造改革に期待したい。 (古川努)
2023年(令和5年)03月17日(金)