西日本政経懇話会

久留米496回 「自由だがつまらない」 大澤氏 貨幣への欲望で講演/西日本政懇2月例会

oosawakurume.jpg西日本政経懇話会の2月例会が24日、久留米市であり、社会学者の大澤真幸氏が「〈格差〉の問題から〈自由〉の問題へ―ピケティの資本論を超えて」の演題で講演した。要旨は次の通り。

 トマ・ピケティ氏は「資本の収益率は必ず経済成長率より大きい」とした上で、資産がある金持ちに富が集中し、格差が拡大しているとしている。この理論は19世紀のカール・マルクスの概念にある「剰余価値」に当たる。

 資本家の原形は守銭奴。「金を使うことで、一層もうかる」という逆説に気付いた守銭奴が資本家になった。守銭奴は具体的なモノへの欲望はなく、何にでもなり得る「形式=貨幣」を欲している。これが余剰価値への欲望につながる。

 モノや行動は貨幣で表現された瞬間に何か低級なものに成り下がる。しかし資本主義のシステムでは低級な「貨幣への欲望」が高級な「道徳の価値」に必ず勝つ。貨幣への欲望に取り込まれると、全ての行動が金をもらうための手段になり、行動がつまらなく感じられるようになる。

 自分の選択に有意義な感覚が持てない「自由の蒸発」の状態が生まれ、「自由だけれどつまらない」という感覚になる。現代を貫いている貨幣への欲望は、人の行為から有意義な感覚を抜き去っていく。

 (清水恵美子)

=2015/2/25 西日本新聞=

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