筑豊第557回 ウイルスと人 共生も/長崎大の山本太郎教授
西日本政経懇話会10月例会が9日、飯塚市内で開かれ、感染症に詳しい
長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授(国際保健学)が「Withコロナ社会の見取り図 ウイルスとの共生の視点から」をテーマに講演した。要旨は次の通り。
新型コロナは発症前でも人に感染させるため、発症した患者を隔離する感染制御ができない。世界中で患者が3千万人、死者が100万人をそれぞれ超えている。もはや根絶できないのではないか。
パンデミックの初期、世界の多くの指導者がコロナ禍をウイルスとの戦争と例えたが、戦いではない。根絶するのではなく、命や生活を守りながら、ウイルスと「共生」することが必要だ。
過去20年でSARS(重症急性呼吸器症候群)や新型コロナが出てきたが、これは過去の感染症に比べて、度を超えた出現頻度だ。野生動物と人との距離が近くなったことが原因で、人間が開発という名のもとに無秩序に生態系に入ったり、地球温暖化によって野生動物の生息域が犯されたりしたことが考えられる。新型コロナの出現は、自然と人との関わりを考えてみてはどうかという警鐘もあるのではないか。 (中川次郎)
2020年(令和2年)10月10日