玄海フォーラム

2019年度第1回例会 続報

sTBWND869.jpg 唐津市で26日にあった玄海フォーラム(会長・馬渡雅敏松浦通運社長、西日本新聞社主催)の例会では、2月まで西日本新聞ソウル特派員を務めた曽山茂志経済部長が「激動の朝鮮半島と九州」をテーマに講演した。曽山氏は日韓関係の懸念材料として、日本企業に賠償を命じた韓国人元徴用工訴訟を挙げ「容易に解決できない問題。どう管理するかが日韓の将来を左右する」と指摘した。

 曽山氏は2016年3月から3年間の在任中、元徴用工訴訟や韓国海軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射問題などで、日韓関係が過去最悪ともいわれる状態まで悪化したことを紹介した。悪化の背景については「日韓の外交や政治のパイプが細くなっている表れ」と分析し、「これまでは外務省や政治家がお互いに非難する前に落としどころを探って衝突を避けてきたが今はできていない」と指摘。「厳しいときこそ、トップ外交で活路を切り開いてもらいたい」と関係改善に向けた日韓首脳の指導力に期待を示した。

 元徴用工訴訟については「国際司法裁判所の判断を仰ぐとなれば、年単位で時間がかかる。日韓関係は不安定な状況が当面続く」と予測。今秋に文在寅(ムンジェイン)大統領の任期(5年)が折り返しに入ることを説明した上で「韓国の大統領は後半に入ると支持率が下がり、反日的なことをして支持率を上げようとする。ただでさえ不安定な状況の中で、そういうことをやり出せば、かなり厳しい局面が続く」と懸念した。

 一方で、18年の訪日韓国人が前年比5・4%増の753万人に上り、その影響でソウルでは日本食ブームも続いていることを紹介。「政治が悪化しているからといって、日韓関係の底が抜けることがない」との考えを示した。日韓関係の悪化に伴う九州経済への影響については「今のところ九州・山口から韓国に進出している企業の中で、撤退や縮小の動きはないと聞いている」と述べた。 (野村創)

2019年6月30日付 西日本新聞(佐賀県版)

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