聞き書きシリーズは１１月２日より、地べたからの目線で農業や農村に関わる作品を発表してきた佐賀県唐津市の農民作家、山下惣一さん（８５）の「振り返れば未来」が始まります。
　
　１９３６年生まれの山下さんは中学卒業後、家業を継ぎ就農。２度の家出を経て、農業と農村の近代化に突き進みます。その過程で感じた日本社会や農政の矛盾と不条理を、当事者として小説やルポで発表。小説「減反神社」は８１年、直木賞候補作になりました。その後も理想の農業を求め、世界６０カ国を訪ね歩くなど行動を重ねて思想を深化。社会に向け、問題提起と提案を続けてきました。
　
　行き過ぎた競争や貧富の差の拡大によって不安定さが増す現代。持続可能な社会を次世代に渡すには、なぜ国内に健全な農業と農村が必要なのか。農、食、環境、健康は、なぜ一体的に考えねばならないのか。そうしたことを、山下さんの半生を通じ、読者とともに考えていきます。聞き手は佐藤弘です。