10日から聞き書き新シリーズ 終わりなき旅 大韓航空機 撃墜事件遺族 岡井仁子さん
2013.10.08 02:58 PM
聞き書きシリーズは、10日から新連載が始まります。1983年、ロシアのサハリン沖で起きた大韓航空(KAL)機撃墜事件の遺族、岡井仁子(ひとこ)さん(77)=宮崎県国富町=の「終わりなき旅」です。
岡井さんは福岡市で3人の息子の母親として、幸せな家庭生活を送っていました。しかし、同年9月1日、事件によって長男の真(まこと)さん夫妻を亡くしました。
ニューヨーク発アンカレジ経由ソウル行きのKAL007便は当時、予定の航路を大きく逸脱。旧ソ連領空を侵犯し、ソ連軍機のミサイルによって、サハリンのモネロン島沖で撃墜されました。
日本人28人を含む乗客乗員269人全員が死亡する大惨事となり、その中に、真さん夫妻も含まれていました。
東西冷戦下で、ソ連側からは事故の原因はおろか、乗客乗員の捜索状況さえ、ほとんど公表されませんでした。厳しい東西対立による厚い壁の中、岡井さんはサハリンでの現地調査を重ねながら、真相究明を国内外に訴えてきました。近年は、サハリンとの国際交流を通じて平和の尊さを発信しています。
国家間の軍事的な緊張に巻き込まれて多くの民間人が命を奪われた悲劇を繰り返さないために、岡井さんは「終わりなき旅」を今なお続けています。その30年の軌跡を編集委員の木下悟がたどります。
=2013/10/08付 西日本新聞朝刊=