先が読めない1分1秒を争う
ニュースの最前線で
紙面編集を行う
編集センター
(編集記者) 萱島 佐和子
2015年入社
※所属部署は取材当時のものです。
西日本新聞社の各部署・総支局から出てきた原稿と、通信社が配信した記事の中から、ニュースの価値に応じてどの面に載せるかを判断し「紙面」の形に作り上げる部署で仕事をしています。
業務には編集に使うパソコンの他に、紙面と同じ大きさの用紙と、新聞の行数を測るための特殊なものさし(わが社では「倍尺」と呼びます)を使います。見出しや原稿、写真などの配置をデスクと相談しながら完成させていきますが、新聞は配達地域によって降版(締め切り)時間が異なるため、1日に数回、紙面を作り替えながら最新の情報を反映させていく必要があります。読者に「面白そう」「読んでみたい」と思ってもらえるような紙面作りが目標です。言い換えるといかにいい原稿であっても、見出しも魅力的でなければ読者の目には留まりません。良い原稿を生かすも殺すも編集者次第です。紙面の質を落とさないよう、日々の積み重ねや責任感に加え瞬発力、集中力を必要とします。
編集センターで勤務する上での大きな利点として、ニュースにとても詳しくなります。取材部門の記者は自分の在籍する部署や地域に密着したニュースを扱うため、良くも悪くもその道“だけ”に特化したプロになっていきます。一方、編集記者になると、毎日すべてのニュースに目を通して「昨日からどこが、どのように進んだのか」「そもそもニュースになる肝の部分はどこか」を常に意識するため、大体のニュースの概要が説明できる状態になります。社内で最もオールマイティーな記者と言えるのではないでしょうか。
また、取材部門に再び異動した際に、ニュースの価値やボリューム、見出しの出来上がりを意識して取材できるようになり、記者としてのレベルアップにもつながると思います。
2022年7月にあった参議院選挙では専門班の一員になり、約1カ月半にわたって専従業務に就いていました。投開票日の準備に加え、情勢解説や候補者全員の経歴などの素材準備、思いがけない立候補などあらゆる事態を想定して当日のシミュレーションをしていました。ところが投開票日の2日前に、安倍元首相が銃撃され亡くなる事件が発生。当日は速報を聞いて急遽夕刊編集班に合流、一面編集の応援に入りました。締め切りまで1時間あまり。この時点で容体などの詳細はわからず、次々入ってくる断片的な情報や原稿をつなぎ合わせて紙面にしていきます。編集者全員が誤字や事実関係の誤りがないか確認し、締め切り時間間際まで更新を続けて夕刊、号外ともに可能な限り最新の情報を読者に届けました。私自身も少なからず衝撃を受けましたが、人の生命が関わるニュースであり国政にも影響する事件である以上、確実に報道しなければという一心でした。
余談ですがこの結果、翌々日の投開票日の紙面構成も大幅に変更することになり、シミュレーションはやり直しに。準備に絶対はなく、先の読めない1分1秒を争うニュースの最前線にいるのだということを改めて実感しました。
私は基本的に多趣味なのですが、子どものころから家族とキャンプに行くのが好きで、今でも休日を利用して出かけています。とはいっても、実態は「焚火!酒!温泉!」という大変自堕落なものですが…。活字から離れて自然の中に身を置くと、ちょうどいいリフレッシュになります。他にも旅行先で史跡巡りをしたり、同期と写真の腕を磨きに出かけたりすることもあります。もちろん、実家で猫と遊ぶだけの日や食っちゃ寝だけの日、映画やアニメをひたすら見る日などもあります(笑)
西日本新聞社で働いていると、個人の意見を尊重してもらえると感じます。先輩や上司に相談する場合、「じゃああなたはどう思うの?」と意見を求められることが多く、若いから、相手のほうが詳しいから、という遠慮はありません。きちんと自分の考えを発信できるほうが評価されることにやりがいや嬉しさを感じます。
また、社として九州に特化した話題や双方向型の調査報道などの強みもあり、自分次第で若手でも活躍の場を広げることが可能だと思います。ブロック紙の利点として、編集部門では自社の取材網だけでなく通信社や他のブロック紙を含む友好紙からも記事が届き、より多くの原稿の中から選りすぐって紙面を作ることができます。取材部門では地域に深く入り込むため、街の人に顔を覚えてもらいやすいです。前任地でお世話になった取材相手の中には今も連絡をくださる方もおり、記者をしているからこそ、じっくり取材したからこそ築ける人間関係のありがたさを実感しています。
「 いい原稿でも、見出しも魅力的でなければ読者の目には留まらない。
良い原稿を生かすも殺すも編集者次第 」