西日本新聞社RECRUITMENT2019 西日本新聞社RECRUITMENT2019

事件と日々向き合い、
背景にある問題や課題の解決を目指す

報道センター社会部
(取材記者:本社編集局)
津留 恒星

2018年入社

※所属部署は取材当時のものです。

01現在どんな仕事をしていますか?

 福岡県警察の担当記者です。都市圏の5つの警察署を受け持った後、今年8月から県警本部刑事部捜査第1課を担当しています。

 殺人や放火などの凶悪事件を捜査する捜査1課の担当として、発生事案があれば昼夜問わず対応します。着任直後、県内の民家で男性の変死体が発見された時は午前1時ごろに県警本部に急行し、捜査関係者に取材して事件性の有無などを確認しました。

 事件取材では警察発表だけでは詳しいことが分からず、現場を歩いて情報を集めることもよくあります。捜査関係者への粘り強い取材を続け、読者が知りたい事実をいち早く報じることも大事な仕事です。責任が重く緊張感があるポジションですが、事件と日々向き合い、背景にある問題や課題の解決を目指して汗を流しています。

02最もやりがいを感じた仕事、経験

 隠されていた不正を突き止めて報道し、行政を改善に動かしたことです。

 2019年、佐賀県唐津市の国特別名勝「虹の松原」を通る県道で、折れた松と走行中の車が衝突し、助手席に乗っていた小学生が亡くなる悲しい事故が起きました。「沿道の松の点検を強化した―」。事故後、県はこう説明しましたが、私は点検が本当に有効なものに変わったのか、どうしてもふに落ちなかったのです。

 現場の松原に何度も足を運び、時には一日中、張り込んで点検作業の実態をノートに記録しました。約3カ月を要しました。その上で、点検業務の委託を受けた業者が、県に提出した報告書を情報公開請求で入手し、ノートと照合した結果、やはり不正が明らかになったのです。

 「報告書には、適正に点検したと記入されている日の一部エリアで、実際には点検が行われていなかった―」

 朝刊でこう報じた後、県は記者会見を開いて事実関係を認め、再発防止策も公表しました。1人の大切な命が失われた悲劇の教訓が生かされていなかったことに対し、強い怒りを覚えました。一方で、遺族であるお母さんからかけていただいた、「津留さんが、唐津にいてくれてよかった」との言葉は忘れることができません。

 自分で考えて問題意識を持ち、根気強く取材を続けていけば、必ず道は開けます。これからも私は、社会を少しでもいい方向に導く仕事をしていきます。

03入社してからの最大の試練や失敗は?
それをどう乗り越えましたか?

 最大の試練は、まさに今です。なぜなら、日々緊張感があり、これまで以上に仕事の重責を感じているからです。福岡県警の1課担当記者は新聞や民放など約10人おり、同志でありライバルです。事件発生時はそれぞれが人脈を駆使してニュースを追うため、「抜いた」「抜かれた」と明暗がはっきり分かれます。あまり眠れないまま夜が明け、「他紙に抜かれているのではないか」と早朝に各紙朝刊を読むことも少なくありません。

 ニュースで他社に勝つ努力も必要ですが、再発防止に向けて事件の背景や裏側を深く知ることも重要です。とはいえ、そう簡単にはいきません。捜査関係者に話を聞くために駅前で5、6時間待つも、会えなかったり、会えても知りたいことを教えてもらえなかったりすることはよくあります。時には落ち込みますが、信念を持って継続することで道が開けると信じ、根気強くトライします。

 不安やプレッシャーと闘う毎日ですが、事件事故を通して社会の問題や課題に一石を投じられるやりがいの大きい仕事です。警察担当チーム一丸となって前向きに取り組んでいます。

ある日のスケジュール

6:00
起床。各紙の電子版を読み、抜かれがないかなどをチェック。
※このスケジュールは事件発生時の多忙な一日
7:30
家を出発し、朝駆け取材へ。捜査関係者に会い、発生した事件の捜査状況などを確認します。
10:00
県警本部に到着。締め切り時間を意識しながら夕刊用の原稿を執筆します。
12:30
記事を出稿後、昼のテレビニュースをチェック。一息ついたら、県警本部周辺で昼食を取ります。
15:30
各紙夕刊やネットニュースを読み、ここでも抜かれがないかなどをチェック。
17:30
県警本部を出発し、夜回取材へ。捜査関係者に会い、捜査の進展などを聞きます。
23:00
帰宅。夕食や風呂を済ませ、翌日のスケジュールを確認して就寝します。

休日の過ごし方

 釣りが趣味で、時間を見つけて近くの漁港に足を運びます。釣りは奥が深く、隣の人は釣れているのに自分は釣れない…なんてこともしばしば。たとえ釣れなくても、広大な海を前に心をリフレッシュできるのが釣りのいいところです。夜は友人や同僚と飲みに行くことが多いですね。単純においしいものとお酒が好きということもありますが、自分の仕事では知り得ない話を聞けるのが楽しいです。ちなみに、お酒はウイスキーが好きで、おいしい1本を探して洋酒店やデパートを巡るのも至福の時間です。

西日本新聞社って
こんなところ

 九州は全国的に関心が高いテーマを多く抱えています。原発やオスプレイ配備計画などの国政課題、毎年のように起こる自然災害、戦争の悲惨さを語る被爆地―など。九州各地に取材拠点がある西日本新聞社には、それらを最前線で取材できる環境があります。

 私は、九州電力玄海原発が立地する佐賀県で原発取材を3年半経験しました。担当になって半年後、1981年に稼働した2号機の廃炉が決まりました。原発関連の交付金を主な財源に歩んできた町にとって経済的打撃は免れず、町民からは「原発が消えたら町が衰退する」と将来を不安視する声が上がりました。一方で、2011年の東京電力福島第1原発事故を踏まえ「これ以上長く動かすと危険だ」と廃炉を受け入れる声もあり、国の原発政策に揺れる町の姿を目の当たりにしました。この取材を機に「原発」が私の一大テーマとなりました。以降、原発を巡る避難計画や同意権、自治体の向き合い方について問題意識を持ち、積極的に記事化しました。

 このような経験ができるのは、若いうちから責任を伴う仕事を任せてもらえる環境もあるからです。きっと、あなたのやりたいことが見つかると思いますよ。

「 不安やプレッシャーと闘う毎日。
でも、社会の課題に一石を投じるやりがいの大きい仕事 」

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