採用案内

記者だより

ちぐはぐな隣国 現場で体感~海外特派員

中国総局長 相本康一

 先日、中国・北京の「城中村」(都市の中の村)を訪ねました。地方からの出稼ぎ者たちが暮らしている集落です。

 ごみが散乱する狭い路地を歩くと、板1枚でつくったようなバラックがありました。ドアを開けたらすぐベッド、という5畳一間に暮らしている親子3人もいました。

 彼らは北京の戸籍を持っていないため、中国の制度上、社会保障などの公共サービスを十分に受けられません。地元の農村にいても十分食べられず、都会にしがみついて生きています。「生活を何とかしてほしい」と、住民たちは口々に話してくれました。

 中国は国内総生産(GDP)で見れば日本の2倍。世界をけん引する経済大国です。北京を歩けば、高層ビルが立ち並び、おしゃれなカフェで若者たちが会話を楽しんでいます。そのそばに、こういう集落もあるのです。貧富の格差は想像を超えていました。

 郊外のゴーストタウンを訪ねたこともあります。立派な邸宅が並んでいるのに、誰も住んでいない。交通の便が悪いのに、見通しもなく巨額の資金を投じて開発し、失敗した典型例です。城中村もゴーストタウンも、どこかちぐはぐな中国社会の縮図といえるでしょう。

 こうした他国の現状を取材し、読者に伝えることが海外特派員の仕事です。参考になるのは、現地のテレビや新聞、インターネット情報。中国の場合、報道の自由が認められていませんが、それでも興味深い話は見つかるし、当局が報道を容認していることから政策の微妙な変化を読み取ることもできます。仲良くなった中国人の友人、知人からヒントをもらうことも多い。言葉の壁はあるし、知らないことだらけで戸惑いの連続ですが、刺激はあります。

 残念ながら現在、中国と日本との政治的な関係は良くありません。中国に住んでいると、国営テレビのニュースがあまりに反日的で、辟易とすることがあります。けれど、一人一人の中国人と付き合うと、決してそんなことはありません。習慣や文化の違いから眉をひそめることもありますが、それは向こうもそうでしょう。日本人同士でもウマが合う、合わないがある。それと同じです。

 今年2月の春節(旧正月)の連休に、九州をはじめ日本にたくさんの中国人観光客が訪れ、温水洗浄便座や炊飯器を買って帰る「爆買い」が日本のワイドショーをにぎわせました。中国でも、この現象は大きな話題になっています。隣国同士、切っても切れない関係であることを実感します。

 中国は、九州と歴史的にもつながりの深い国です。「嫌中」などと言っても、事態は変わりません。いたずらに対立をあおることは避け、現場で体感し、目で見た実像を伝えようと肝に銘じています。

 海外に暮らしてみて、逆に日本のことを客観的にとらえなおす機会も増えました。海外特派員ならではの醍醐味かもしれません。

ヘルプ・総合案内

採用情報

メディア案内

サービス

購読申込み

西日本新聞ネット書店

求人情報 webサクセス