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記者だより

罪と更生 立ち直ってもらうために

報道センター社会部  一瀬圭司

 飲酒ひき逃げ事件で息子を亡くしたお母さんが、こう話していました。「犯人と同じ空気を吸っていると考えただけで、へどが出る思いがします」。とげとげしい言葉ですが、犯罪被害者の遺族の素直な気持ちだと思います。

 「刑のかたち」「少年院のいま」。長期シリーズ「罪と更生」の第5、6部として先月と今月、社会面に載せた連載記事です。3人の記者が、罪を犯した人に償わせ、非行少年を教育する施設、つまり矯正施設と呼ばれる刑務所と少年院を取材しました。

 記者たちはこれまで事件取材を経験してきましたが、多くは事件発生から容疑者や非行少年の逮捕・補導、裁判や審判を中心に追い掛けてきました。一方で、罪を犯した人や非行に至った少年たちが、刑務所でどんな償いをし、少年院でどんな矯正教育を受けているのか―といった裁きの「その後」を追跡することはあまりありませんでした。

 今回取材を進めると、矯正の世界は変革のさなかにあることを実感しました。社会に戻って再び罪を犯さないように、非行に走らないようにするにはどうすればよいか、いろいろな方法が試されていました。

 原稿を書きながら、これまで出会った犯罪被害者や遺族の顔が浮かぶことがありました。盲導犬を育てるプログラムや、料理や縫製、介護や育児の実習…。心を養い、手に技をつけるための新しいプログラムに接するとき「悪いことをした人に、ここまでしてあげる必要があるのか」「どんなに償っても、遺族の悲しみはなくならない」といった声が聞こえてきそうでした。

 ただ罪を犯した人たちは、刑務所での懲役や少年院の収容期間を終えれば、私たちの住む地域に戻ってきます。罪は決して消えないし、被害者の無念や悲しみもなくならないけれど、だからこそ、ぜひとも立ち直ってほしい、悪いことを繰り返さないでほしい、と思います。

 冒頭のお母さんは苦しみながらも年に2回、刑務所に足を運び、受刑者に思いを語っています。息子をどれほど愛していたか、事件で人生がいかに一変したか―。講演を終えるとどっと疲れが出て体調を崩すそうです。「もう誰にも同じ悲しみを経験してほしくない」。その思いだけで続けています。

 矯正施設の取材を重ねると「人は変われる」と信じたくなります。罪を悔いる受刑者の表情、ハキハキとあいさつする少年たち。職員も懸命に取り組む人が多かった。国は今夏、刑務所や少年院を出て2年以内に再び入る人の割合を10年後に2割減らす目標を立てました。本当に更生できたのか、心の中は見えませんが、数値は一つの指標にはなります。取材で出会った人たちの今後を冷静に見ていきたいと思います。

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